ビクトル・ベクセルベルグ氏、「スコルコボ」プロジェクトの総裁=アレクセイ・フィリポヴ撮影/ロシア通信
 

ロシア屈指の大富豪の一人である実業家のビクトル・ベクセルベルグ氏が、野心的計画を日本に持ち込んだ。それは極めて経済的な計画である。ベクセルベルグ氏は、レノバ投資グループのオーナーであり、フォーブス誌によれば、ロシア長者番付で第8位、世界長者番付で第64位につけている。同氏は同時に、とりわけ野心的な「スコルコボ」プロジェクトの総裁を兼務している。

「スコルコボ」は、ドミートリー・メドベージェフ前大統領が打ち出したプロジェクトだ。プロジェクトの課題は、新技術を開発する際のスタートアップとなる、米国のシリコンバレーに似たハイテク都市を創設することで、ロシア大手企業や外国各社のR&B(研究開発)センターをターゲットにしている。ロシアにこうしたプロジェクト設立の経験がないため、ベクセルベルグ氏の主要課題の一つは、「スコルコボ」の活動に外国各社を引き入れることだった。すでに米国(マイクロソフト、インテル、IBM、ダウ・ケミカル)、フランス(アルストム)、オランダ(EADS)、ドイツ(シーメンス)、スウェーデン(エリクソン)、フィンランド(ノキア)の各社が参加を表明している。だが、日本の各社との協力は、まだ始められていない。「スコルコボ」にとって日本の経験は有益だろう。日本はハイテク分野で世界のリーダー的存在の一つと考えられている。現在、スコルコボの最重要課題のひとつが、アジアの、特に日本のパートナーを見つけることだ。

ビクトル・ベクセルベルグ「スコルコボ」財団総裁の東京訪問は、この方向への第一歩になった。ベクセルベルグ氏は実業界、政界の代表らに対してプロジェクトについて語り、プロジェクトへの参加を呼びかけた。「ロシアは日本の各社にパートナーシップと互恵協力を期待している。「スコルコボ」財団は、新技術とイノベーション(技術革新)プロジェクトを支援し、それらを創設するために作られた。日本の各社は、ロシアの研究センターとのパートナーシップによって、ロシア市場、国際市場において実現可能な技術を生み出すだろう」とベクセルベルグ氏は述べた。

ビクトル・ベクセルベルグ氏は日本の玄場光一郎外相からも個人的招待を受けた。閣僚レベルの人物は、汚職やロビー活動の嫌疑をかけられないように、実業界の代表とは会いたがらないことを思えば、これは幾分、異例の招待であるといえる。玄場外相は、国際戦略情勢の変化は、イノベーション分野を含む全面協力拡大の気運を誘うものだと述べるとともに、両国関係をさらに発展させるために、ロシアは投資風土を改善し、汚職対策をとるべきだと強調した。それに対してベクセルベルグ氏は、「スコルコボ」プロジェクトがそれらの問題の一定部分を解決し、日本の各社がプロジェクトに積極的に参加するようになることに期待を示した。 

ロシアのメディアは、日本各社の「スコルコボ」への参加は、ロシアの学術都市にとって新しい経験になるだけでなく、さらに価値ある恩恵をもたらすものと評価している。例えば「コメルサント」紙は、「『スコルコボ』は、現在にいたるまで平和条約が締結されていない両国関係において、正常化へ向けた第一歩になるに違いない」と書いている。

 

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